2月 かまくら

 政府により管理された本丸でも、雪は降る。審神者が選ぶ景趣に合わせた気候が反映されるからだ。
 暦に合わせた景趣を選択する審神者の嗜好により、今はそこかしことしっかり冬景色が広がっている。
 そんな冬の名物とでもいうべき光景も、庭で繰り広げられている。
 雪だるまが作られ、雪兎が作られ、今はかまくらが作られているところだ。

「お前さんは一緒にやらないのか?」
「ああいうのは俺向きじゃないからね。貴方こそ参加しなくていいのか?」
「じじいに無茶を言うな。うはっはっはっ」
 庭がよく見える暖かな室内で、共に茶を飲みながら長義も則宗も互いに不参加を決め込んでいるかまくら作りは、南泉と鯰尾が短刀たちにせっつかれながら作成しているところだ。
 ある意味、適材適所というもの。
 南泉は後藤藤四郎や馴染み深い短刀に請われれば断ることをしないので、こういうときよく駆り出される。長義は馴染み深かろうとなんだろうと、やりたくないことはきっぱりと拒否をつきつけるので、こういうときに声がかかることはない。
「軽口を叩くのが本当に得意だな」
「なぁにお前さんほどじゃないさ」
 狸の化かし合いのようなやり取りは、長義にとって則宗が気安い相手だから行われることだ。そういう相手だからこそ、ぽつりと本音を漏らしたところで、気にすることはなにもない。
「俺は彼が戻ってきたときに暖かいお茶と美味しい菓子を出す役割が似合うからね」

―了―