1月 夕焼け
本丸はなにかしらが増えるたびに手狭になっていく。そのため、あらゆるところが増設されている。同時に使われなくなる場所も生まれる。
そんな使われなくなった場所のひとつに、長義のお気に入りのところがある。
なにをするでもなく、ただぼんやりしたい日に、うってつけの場所なのだが。
「山姥切長義~迎えに来てやったにゃ~」
容赦なく邪魔をしにくる刀が、必ずいる。
「…………」
すぐ、ではないが、この声を無視しようものならば、情け容赦なく踏み込んでくるので、一呼吸置いてから、踏み荒らされる前に長義は腰をあげる。
扉を開ければ、全身を夕陽に染め、満面の笑みを浮かべた南泉が「もーすぐ飯だぞ」と、告げてくる。
―了―