#14:闇踊る夜食過ぎ

掲載内容
闇踊る夜食過ぎ


 この本丸にいる山姥切長義は、だいたいいつも腹を空かせている。
 けっして食べていないわけではない。むしろ毎食よく食べている。米は量にしたら毎食飯茶碗三杯は軽く平らげているのだから。
 それでもこの本丸にいる山姥切長義は、頻繁に空腹を訴える。
「猫殺しくん、なにか食べさせてくれ」
 その空腹を南泉一文字に訴え、どうにかさせようとしてくる。
「おまえにゃあ……!」

 ついさっき! 飯を! 食い終えた! ばかり! だろ!

 ――と、言いたくなるのを南泉一文字は、ぐっと飲み込む。
 はあっと深々としたため息をこぼしてから「礼はなんだよ?」と、ただでは動かないことを示す。
 これは山姥切長義のことを甘やかす義理は南泉一文字にはない、ということを己にも言い聞かせるためだ。