#13:多彩がみせる星の戴き1

掲載内容
多彩がみせる星の戴き1
くっつき虫たちは離れない


 時の政府勤めの南泉一文字は、審神者によって励起される前の刀剣男士に人の身を得た際の生活における最低限の知識を教える部署に所属している。
 「生活における最低限の知識を教える」とは言うものの、顕現した際にはその刀にまつわる歴史や元の主に関する以外の記憶は消失されるので、教えることに意味があるのかどうかについておおいに疑問が生じているところではあるが、そこについてどうこう問えるだけの身分にはないので、従うしかないのが時の政府勤めの刀剣男士である。
 あらゆる物事は、相応の権力を持たなければなにも成し遂げられぬのだ。
 権力など一切持たぬ南泉は、上からの指示おとなしくに従い、この部署でふわふわとしながら任務遂行をしていた。
 そして今日も今日とて任務を遂行すべく、配属先の部署へと繰り出すのだ。

 刀剣男士にも様々なタイプがいるのだが、南泉は「刀猫男士」と呼ばれている刀剣男士の面倒をこの部署でみている。
 しかし刀猫男士は一般的な個体である刀剣男士とは違い、個性がだいぶ強い。あまりの個性の強さから、面倒をみる、というよりは、世話をしている、という言葉のほうがしっくりとくるのであった。
 託児所とか保育所とか、そういった言葉が当てはまるような、そういう環境なのだ。
 つまり子守をしている状態にほぼあてはまる。
 もちろんこのような状況下において、南泉たった一振で励起前の刀剣男士の面倒をみているわけではない。
 この部署は主に尾張徳川に縁のあった刀剣男士たちが配属されていた。





 刀猫男士は名称に猫がついているだけあって、猫のような刀剣男士である。
 毛のある尖った耳と尻尾が、おもな特徴だ。
 さらにわかりやすく猫であるのだと痛感するのは、言語だ。刀猫男士は「にゃーにゃー」と話す。話すというよりも、鳴く。まさに猫である。話が通じてるような、通じてないような、そういう状況だ。そのような男士なので、生活について教えるよりも、世話をしている実感のほうが強い。
「にゃー」
 なにかしらの要求をしてくるときも鳴いて訴えてくるので、どういう理由で訴えてきているのかを考える必要が生まれる。
「にゃんだよ……刀猫男士の山姥切長義……」
 南泉のちょうど膝あたり、そこが手を伸ばしたときに掴みやすい高さなのだろう。ギュッと掴んで、ぐいぐい引っ張って。当たり前のようにこの行為に及んでいる理由の申し立てをしてくる。簡単に言ってしまえばただの要求だ。