#06:Brilliant Bouquet ~きみのきれい~

掲載内容
Brilliant Bouquet ~きみのきれい~


 顕現して、本丸で初めて顔を合わせたとき、南泉一文字ははっきりと言った。
「見知った顔でも、お前には会いたくなかったよ」
 彼の刀があげた理由は、山姥切長義の性格に難があるからだと。

 だがその直後に頭を抱えてうなだれ、こうも言った。
「なんであんなにゴツい刀が、そんな華奢できれいな顔で出てくんだよ……」

 そして、
「きれいな顔は好きだから、困るんだよ……にゃ」
 ――と。



 南泉一文字はとてもわかりやすくきれいな顔が好きだ。
 そのため日々どれだけの口喧嘩をしていても、どんなに悪態をつこうとも、南泉は長義にとても甘い。

 長義の顔が南泉好みの、きれいな顔だからだ。

 なので今日も長義は己の顔を利用して、南泉に夜食をねだっていた。
 理由は単純で、山姥切長義は料理ができない。それだけの話である。正しくは、やる気がなくて、覚える気もない――というだけなのだが。

 だから長義はいつも南泉にねだる。必ず文句は言うが、絶対作ってくれるからだ。
 南泉は長義とは違い、料理ができるし、作ってくれるものは美味しい。
 そもそも南泉が夜食を作ってくれるのは、長義の顔が南泉好みのきれいな顔だから、というだけではなく、恋仲という関係なのも、大きな理由となる。
 他とは違う関係は、特別だからこそ、甘え、甘えられ、わがままだって言えるものだ。特別な関係というものは、それだけでとても心を弾ませる。

 その特別ということに浮かれつつ、長義のために夜食を作ってくれている南泉の背中に向かって、長義は楽しげに言葉を紡ぐ。
「猫殺しくんは、本当に俺の顔が好きだよね」