#05:Brilliant Bouquet ~甘いくちびる~
掲載内容
Brilliant Bouquet ~甘いくちびる~
非番という休みを満喫すべく、南泉は自室でごろごろとしていた。隣には同じように非番の長義が、当たり前の顔をして南泉の部屋に居座っている。
この状態は日常茶飯事のことなので、長義が居座っていようと南泉はまったく気にしない。長義はそこに居て当たり前。そういうものだと認識しているので気にすることなく、南泉はごろごろしていた。
ごろごろとしているので、当然のようにうつらうつらと眠気に誘われ、いつ寝入ってもおかしくない、そんな状態にいたのだが、それを長義は勢いよく邪魔をしてきたのだった。
「猫殺しくんっ! 出掛けようっ!」
長義は南泉の身体を思い切り強く揺さぶり、そんな風に声を掛けてきたのだ。
「んあっ!?」
南泉はうつらうつらとしていたところでそんなことを言われたものだから、半分以上停止している思考は端的な言葉しか紡げなかった。
しかし南泉のそんな状態は気にしないとばかりに、長義は言葉を続ける。
「出掛けようって言ってるんだよ!」
「ふぁー……、んだよ。お前は一体どこに行きたいんだ、にゃ?」
あくび混じりではあるが、意識を覚醒させようと目をこすりつつ、身体をゆっくりではあるが起こし、南泉は長義と向き合う。
こういうとき、南泉はできる限りちゃんとした態勢を取り、相手と向き合うようにしているので、寝転んだままではいない。
――のだが、そんな南泉の姿勢を気にすることなく長義はかなり前のめりで、テンション高く、話を続けてくる。
「ここ! 行こう!」
ずいっと南泉の眼前に端末を押し付けてくる。
「ちけーにゃっ! 見えねぇよっ!」
怒鳴るように大きな声をあげつつ、南泉は己と端末との間に手を差し入れて、どうにかして空間を作り、端末画面が見えるくらいの距離を確保する。
南泉の目に映るのは、とっても甘そうな、フルーツ。続いてグラス。グラスの中には、またフルーツ。形状からしてこれはたぶん、パフェ、なのだろう。けれど自信が持てなくて、南泉は恐る恐ると言った感じに言葉にする。
「パフェ……?」
「そう、パフェだよ。このパフェを現世に食べに行こう、猫殺しくん!」
長義はテンション高く簡単に食べに行こうと言う。